それを嫌いになれないから

音楽、芝居、文学、自分が楽しめることを綴る場所

古本屋を愛する気持ちと後ろめたさの狭間

 古本屋が好きです。具体的には某有名チェーンの古本屋が好きで、見つけたらすぐ入ります。基本的に本が好きな上にCDやDVDも扱っているあの古本屋は私にしてみれば宝の山。眺めているだけでも楽しいし意外な掘り出し物に心が踊るあの感覚も好きです。

 でも古本屋の良さはなんと言ってもその安さにあると思います。もちろん絶版になった作品や手に入りづらい作品、その時しか売っていない映画や演劇のパンフレットなんかも売っていたりして、まさにお宝が発掘されることもあります。それも良さの一つです。しかし、一度人の手に渡ったという点で基本的には定価より安く販売されるのが古本や中古品です。小説が半値で買えたり、シングルCDなんて下手したら100円で買えたり。それでいて本もCDやDVDも、それ自体はただの媒介体でしかないのですから、その中身に劣化はありません*1。新品でないことが気にならない人ならば、こんなにいい節約術はないわけです。

 しかしそれを節約と言っていいのでしょうか。

 古本屋のシステムを完全に知っているわけではありませんが、恐らく商品の流通経路は、中古品を売る客→古本屋→中古品を買う客、この三者です。そしてお金もまたこの三者の間を動いているはずです。そうするとこの古本屋での売買に、商品を作り出した人が関わることはない。つまり、商品を作り出した人たちに利益は一切ないということになります。もちろん、商品がこの古本屋での流通の中に入るためには、最初の「中古品を売る人」がその商品を手に入れなければならないし、その時に支払う代金には商品の作り手への利益が含まれるわけですが、そこを通過すると、あとはいくらたくさんの人の手に渡ったとしても、それに見合った利益が作り手へ入らない。それがこの中古品の流通システムなのです。

 新品を購入すれば、購入した分の利益が作り手に入ります。買えば買うほど、作り手に利益が入り、それがオリコンチャートや発行部数などにも反映されるし、そうすれば世間的にも注目されてさらに売れることになるかもしれません。利益が上がることも話題になることも、次の作品を作る上ではとても大切なことです。売れることが分かればどんどんリリースするし、利益が上がって制作にかける費用も上がればよりよい作品が生まれる。そうなれば購入する我々も嬉しいし、それでまた利益が上がれば作り手も喜ぶ。まさにWin-Win。これが本当の流通システム。

 これが中古品の流通に入ると、作り手に利益が入らない、売り上げにも換算されないため、次の作品作りへのモチベーションが上がらないのです。よって、いい新作品も生まれなくなる。そうして衰退していく。ただの負の連鎖です。こんなことでいいのでしょうか。

 こんなことを気にするようになったのはとある本でした。東野圭吾さんのエッセイ集『さいえんす?』。科学的なお話や数学の必要性、東野さんが以前勤めていた会社のお話やそれ後小説家になった経緯、時には野球のお話もあるのですが、とても興味深い内容で、その中には本についてのお話もありました。特に「本は誰が作っているのか」では昨今の本を取り巻く環境について警鐘を鳴らすようなお話があり、古本屋についても書かれていました。そこに書いてあったのはもっと質が悪いのですが万引きした本を古本屋に流しているというお話で、作り手に利益も入らなければ、むしろ万引き犯に利益を与えてしまってるわけです。さらに東野さんは図書館についても言及されています。図書館というと文化的でなんだか良さそうな響きですが、これもまた作り手に入る利益以上に作品が消費者の手に渡っているのです。そうやって本の売れ行きが悪くなって、本の文化が廃れてしまうことを懸念されていました。そしてこれは本に限らずCDやDVDなどにも言えることで、音楽業界や映画界も同じだと思います。

 それまで古本屋も図書館も通い詰めていた私としては衝撃的な内容でした。確かにその通りなのです。しかしそれを読んだ当時中学生の私には、古本屋も図書館も利用せずに様々な本を手に取るだけの金銭的余裕はありませんでした。もちろん今もそんなに無いです。でもこれを読んでから、できるだけ新品を買おうと思うようになりました。

 決して古本屋が悪いと言っているわけではありません。冒頭にも述べたように、今は手に入らないまさに「古い」本を手に入れられる点においては良いのです。だってもう新品は売っていなのだから。ただ、今売っているものに関しては、新品を正当な手段で購入すれば、その利益が作り手へ入ることで、直接作り手への応援の印になるのです。私はあなたの作品が好きですよという思いを伝える1番の方法が新品を買うということなのです。当たり前のことですが、古本屋や図書館だけでなく、ネットで簡単に違法のコピーが無料で見られてしまう時代だからこそ、正当なルートで正当な代金が支払われることが、作り手にとっては非常に大切なことなのです。

 そうは言ってもいつもいつも新品を買えるほどの余裕ももちろんない。でもできる限り作り手へ還元したい。そんなことをいつも考えています。古本屋も図書館も多少後ろめたさを感じながらも相変わらず利用していますが、いいな面白いなと思った作品は改めて新品を購入するようにしたり、新作はなるべく購入するようにしたり、CDやDVDはレンタルして安くても利益が作り手に回る方法をとってみたり、そんな悪あがきをしています。でもほんの微々たるものであっても、好きな作品や好きな人に貢献できている気がして、少し嬉しく思えることもあります。そしてなにより、やっぱり新品はいいです。綺麗だから(笑)

 最近は欲しい本やCDが山のようにあって困ります。古本屋で半値で売っているのを見かけてしまいましたが我慢したままです。CDもレンタルするか買うか悩ましいところ。金欠状態から脱するまでは買えませんね。なんてことを思いながら某チェーン店の古本屋にふらっと入ると、好きなバンドのインディーズ時代の廃盤を発見。発売はおよそ20年前。当時の定価は知りませんがアルバムで500円は安い。すぐさま購入致しました。これこそが古本屋の真の強み。だから古本屋はやめられない。

 

 

さいえんす? (角川文庫)

さいえんす? (角川文庫)

 

 

 

*1:本のページが破れていたり、ディスク面が傷ついていて再生できないなどの物理的な欠陥がない限り、本の物語の内容や、CDに収録されている音楽、DVDのドラマや映画の映像など、それ自体は劣化しないという意味