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ミュージカル『ドッグファイト』観劇録

 2017年12月8日、大阪のサンケイホールブリーゼにて上演されたミュージカル『ドッグファイト』を観劇しました。8日の公演は舞台初日だったのですが、私はというと単に空いている日のチケットを取ったら、公演の数日前に初日だということに気づいて、大変興奮しました。2015年の上演から2年経ち、新たなメンバーを迎えての再演ということで、きっと2年前より格段にパワーアップしていることでしょうが、あいにく初演の『ドッグファイト』は観ておらず、新鮮な気持ちで観劇しました。

 海兵隊員たちの出兵前夜の出来事を中心に進んでいく物語。最後の夜を楽しむ海兵隊たちの様子が明るい曲と楽しいダンスで表現されながらも、戦争へ向かうという不穏な空気が終始漂う不思議な世界でした。

 舞台の中で時間軸がいくつかあって、それぞれのシーンで大きく雰囲気が変わるのに驚きました。メインの時間軸中であるドッグファイトの最中のダンスシーンは明るく馬鹿なこと言って笑えるシーンも多数。特にバーンスタイン(矢田悠祐)やフェクター(浜中文一)の言動には何度も観客からは笑いが起きて楽しかったです。話の中心になっている人の後ろで踊っている他メンバーが面白くて、どこを見ていいか分からなくて大変でした。その中でエディ(屋良朝幸)のローズ(宮澤エマ)への心情の変化には切ないものがありました。ローズに惹かれていくエディの純粋さが別れが近づく二人には切なく映りました。戦争シーンは最後の最後にほんの少しでしたが、それまでのドッグファイトの様子やエディの心の変化を見ていると、その一瞬の戦争シーンにそれまでのうっすらと漂い、ドッグファイトを楽しんでいるメンバーが秘かに抱えていた不穏さが詰まっていました。次々と打たれて死んでいくメンバーと一人生き残ったエディが辛い。それまで所々で見られた時間軸のズレがここで判明して、最初のシーンの意味が深く心に突き刺さりました。それを見ているからこそ、最後のローズとの再会シーンは見てるのが辛かったです。辛いけど最後の「おかえり」は切なさもありながらローズの優しさに満ちていて余計に胸が締め付けられるエンディングでした。

 凄いなと思ったのが、物語自体はとてもハッピーエンドとは言えませんが、その後カーテンコールで雰囲気は一変して明るい音楽とダンスで重たい空気を払拭してくれて楽しい気分で観劇し終えることができました。皆さんのそれぞれのソロのダンスはとても素敵でした。最後のあいさつでは、大阪と東京を混同した屋良さんや、一番緊張していたと暴露された宮澤さんが物語とのギャップでとても可愛らしく思えました。屋良さんに名前上げて弄られた末澤誠也さんも微笑ましかったです。

 観劇の目的である浜中さんは、まず観劇前に購入したプログラムを見て短髪(というかほぼ坊主)になっていることに驚きました。稽古初日に切ってきたらしいのですが、舞台上の浜中さんも短髪。初演時も短く切っていた記憶がありますが、ここまでではなかったと思うのでそれだけでも気合を感じました。開演前にプログラムを読んでいたのですが、役作りのために髪型だけでなく肉体改造も行っていたようで、実際に見てみると確かに体が大きくなっていました。あまり利口ではないフェクターなので物語の中では基本お笑い要因で、スポットライトの当たっていないところでも面白い言動が終始みられて、笑いが絶えませんでした。特にドッグファイトのダンスシーンで、スリービーズが言い争っている後ろで、相手の女性に振り回されて踊っているフェクターはずっと見ていても飽きませんでした。しかし、ダンスや歌は最高でめちゃくちゃかっこよかったです。カテコのソロダンスはキレキレ。歌って踊る浜中さんはやはり最高でした。

 舞台は一度では物足りませんね。ドラマなら中心人物だけが映りますが、舞台はスポットライトの後ろでもそれぞれお芝居していらっしゃる。物語を追うためには中心で話を進めている人物を追わなければなりませんが、フェクターの細かい言動も面白く、おまけにスティーヴンス役の末澤さんも見ようとすると目がいくらあっても足りません。末澤さんのダンスはさすがですね。キレもありつつ、なによりしなやかなダンス。美しいという言葉がぴったりとハマります。かっこよかったです。主演の屋良さんは言わずもがなダンスは素晴らしいですが、驚いたのが歌。初演時を見ていませんし、屋良さんをそんなに知っているわけではありませんが、舞闘冠などで少し見ていたものと比べると、めちゃくちゃお上手になっておられるように感じました。本当に失礼な話、屋良さんこんなに歌お上手なんだと驚きました。なめてかかってすみませんでした。

 人生2度目の舞台観劇でしたが、今回も楽しませていただきました。面白いと一概に言ってしまうと失礼な気もしますが、本当に面白くて、ぜひもう一度見たいと思いました。楽しい時間をありがとうございました。